カルシウムは私たちの体内で骨や歯、血液、細胞など様々な場所に様々な形で存在しています。食物から摂取したカルシウムがこのように形を変えて存在するためには、体内で「代謝(消化・吸収・骨形成)」される必要がります。しかし、カルシウムは体内での吸収率が低いとされているため、私たちの体に入ったカルシウムもそれ単体では代謝することはできず、そこには様々な栄養素やホルモンなどが必要となってきます。今回は、カルシウムが体内で代謝される際に必要な栄養素や、ホルモンの働きをみていきましょう。
ビタミンD
食事から摂取したカルシウムは小腸で吸収され血液中に入る(血中カルシウムイオンとなる)のですが、この時に必要になってくるのがビタミンDの存在です。
ビタミンDは外に出て紫外線に当たることで私たちの皮膚で生成され、主に肝臓に蓄えられています。また、食品中では植物性食品(しいたけなどのキノコ類)に含まれるビタミンD2と、動物性食品(煮干し、シラス干し、イワシ、鮭 など)に含まれるビタミンD3があり、どちらもカルシウムの吸収に必要となってきます。吸収されたビタミンDは肝臓と腎臓を経て活性型ビタミンDに変わり、この活性型ビタミンDがカルシウムの取り込みを行います。
すなわち、丈夫な骨を作る際にはカルシウムだけではなく、必ずこのビタミンDが必要になってくるのです。とくに、ビタミンDは日照量の少ない地域に住んでいる人や、紫外線をカットする日焼け止めや化粧品を常用している人、外での活動が制限される高齢者などでは食物(場合によってはサプリメント)からの摂取が不可欠です。
ビタミンK
ビタミンKは、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があるため、丈夫な骨作りには欠かせません。そのため骨粗鬆症の治療薬にも用いられています。ビタミンKは体内では腸内細菌によって合成されていますが、必要量の半分程度しか作ることができないので、食品からしっかり摂取する必要があります。
(ビタミンKを含む食物…………納豆、海藻、春菊、ほうれん草 など)
パラソルモン(副甲状腺ホルモン:PTH)
パラソルモンとは、咽頭部あたりに位置する甲状腺の裏側にある副甲状腺という臓器から出るホルモンのことです。ホルモンとは、私たちの体の状態を一定に保つために、様々な情報を伝達する物質です。その中でもパラソルモンは、ビタミンD3を活性化しカルシウムの吸収を促進する働きがあります。また、血液中のカルシウムイオンの濃度が下がった場合、骨に蓄えてあるカルシウムを血中に送るべく古くなった骨を壊す「骨吸収」が促進されるのですが、パラソルモンにはこの時に骨を壊す役割を持つ「破骨細胞」を活性化させる働きがあります。
カルシトニン(甲状腺ホルモン)
カルシトニンとは、咽頭部あたりに位置する甲状腺という臓器から出るホルモンのことです。カルシトニンは、血液中のカルシウムイオン濃度が上がると分泌量が増加して、骨が壊される骨吸収が抑制され、その分カルシウムによって新しい骨が作られる「骨形成」が進みます。
このように、パラソルモンとカルシトニンは反対の働きをすることで体内のカルシウムの濃度を一定に保っています。また、カルシウムが不足し血液中の濃度が下がると、骨吸収が進み骨がもろくなり「骨粗鬆症」へと繋がってくるため、食物や吸収の良いカルシウム剤からカルシウムをしっかりと摂取して、常に体内には十分な量のカルシウムを満たしておく必要があります。