「フレイル」という言葉を最近耳にしませんか?でも何のことかよくわかりませんよね。ここで、簡単に「フレイル」について説明しましょう。
フレイルとは?
フレイルとは「おとろえ予備軍」です。
フレイルという言葉は、虚弱(Frailty)から派生した言葉です。高齢の方で足腰が弱り、食事の量もへってきて次第に体が衰弱している状態をいいます。
フレイル状態のまま放っておくと寝たきりや要介護の状態になってしまいます。ただし、フレイルは進行するだけでなく、兆候に早く気づき生活習慣を見直すことにより、健康な状態へ回復することができるのです。
「私ってもしかしてフレイルなの?」と思われた方もいますよね。では、どうやってチェックしたらいいのでしょうか?
フレイルチェックをしてみよう
フレイルは3つの柱があり、栄養・運動・社会参加が関係しているといわれています。そこで下図のフレイルチェック「イレブン・チェック」をしてみましょう。
11個のチェックのうち、右側(オレンジ枠内)につく○の数が多いほど注意が必要です。特に○が6つ以上当てはまる人は、フレイルの危険性が高くなります。フレイル予防をこれから意識して出来るところから生活習慣を改善していきましょう。
フレイル予防をしよう!
今、フレイルに当てはまった人も、ちょっとこれから心配・・・という人もこれからの生活で以下の事を心がけてみましょう。
1.栄養をしっかりとる
バランスのよい食事をとろう!主食・主菜・副菜をそろえましょう。詳しくはこちらへ
2.運動をしましょう
筋肉が衰えないように日頃の生活や自分の出来る範囲での体操や筋トレなどの運動をとりいれよう。詳しくはこちらへ
3.人とおしゃべりをしよう!
社会とのつながりもフレイル予防には大切です。詳しくはこちらへ
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フレイル予防の柱の一つ「栄養」についてです。
フレイルには「低栄養」が深く関わっています。低栄養とは、日常で必要なエネルギー量やたんぱく質などを摂ることができなくなっていく状態です。
高齢になると、噛む力や飲み込む力が低下して、だんだんと食事量がへってくる傾向にあります。また筋力も衰えていくことから体を動かすのが億劫になり、運動量が減ってしまうため、食欲もわかなくなってしまいがちです。そして、食事が十分に食べられないという悪循環におちいってしまうのです。
○体重が減ってきたら要注意!
低栄養になると、体重が若い頃に比べて低くなってきます。また、BMI値で適正体重かどうかの目安となります。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)
私のBMIはいくら?
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
(例)身長160cm、50kgの場合のBMI
50(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=19.5 ←BMI19.5となる。
BMIが表の範囲よりも低くなればやせがたとなり低栄養のおそれがあり要注意です。
厚生労働省による令和元年「国民健康・栄養調査」では、65才以上の高齢者の低栄養傾向の者(BMIで20以下)の割合は男性12.4%、女性20.7%となり、特に75才以上の女性は20%以上で5人に1人が低栄養傾向にあります。
○3食欠かさず、栄養をしっかりとろう
体を維持するためにはエネルギー、たんぱく質が必要です。エネルギーは、炭水化物(主食のパンやごはん、麺類)を充分にとることが基本です。たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品が供給源となります。その他、栄養素(ミネラルやビタミンなど)が含まれている野菜や海藻、きのこ類も副菜にそえましょう。
たんぱく質は、筋肉の原料にもなります。またエネルギーが一日の摂取必要量に満たないと、体内の筋肉などを燃やしてエネルギーを補おうとします。そのため筋肉が消費されてしまうのです。
また、日本人はカルシウムがどの年代も不足しています。カルシウムは、骨に99%あり残りの1%は血液中にあります。この1%の血液中にあるカルシウムイオンは、体内の様々な働き(神経細胞からの情報伝達や筋肉の収縮、血液の凝固作用など)に使われています。そのため、血液中のカルシウムが不足してくると、骨から溶かしてでも血液中にカルシウムを補おうとするため、骨がもろくなってしまいます。
カルシウムは、牛乳や乳製品からの摂取が比較的吸収できるといわれていますが、他の食物では豆腐などの大豆製品や小魚、小松菜などにも含まれています。それらも主菜や副菜にプラスして摂取しましょう。
骨量は20歳前後をピークにして、加齢とともに減少してしまいますのでカルシウム不足にならないよう日頃から注意することもフレイル予防の1つになるでしょう。
<食事の工夫>
・3食で十分に食べられない場合、間食で補いましょう。
例 間食をチーズやヨーグルトにする、豆乳をコーヒーにプラスするなど。
・朝食を抜かないようにしましょう。
・レトルト食品や缶詰などを利用して手軽に摂取。
・味噌汁を具沢山にして野菜を摂取する。具沢山にすることにより、塩分も控えめになる。
○食べるためには、口腔内の環境や、しっかり噛んで食べることも大切です。
噛む力が弱ってくると、やわらかい食べ物ばかりを選んでしまい、噛む力が低下するという悪循環になってしまいます。 時々、たくあんや小魚、さきいかなどあえて固いものをたべて噛むことも大切です。 |
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また、おしゃべりや大きな口をあけたりして口や口周りの筋肉を動かす、歯周病や虫歯予防のためにお口の清潔をたもつことも必要です。 |
○筋肉は何もしないとどんどん減っていきます!
筋肉は使われていないと減ってしまいます。加齢も一因の1つです。
40才以降では10年あたり約8%減少し、70才以降では10年あたり約15%減少してしまうのです。
加齢とともに、体を動かすことが億劫になりがちですが、筋肉は何歳になっても増やすことができるのです。毎日のちょっとした運動が、長い目でみると、フレイル予防、そして健康長寿をのばすことにつながります。
理想は、毎日のウォーキングや筋力トレーニングをすることですが、わかっていてもなかなか出来ない・・・という方もいらっしゃいますよね。
そういった方は、まずは日常のちょっとした動作や意識を変えることから始めてみましょう。
例えば
・エレベーターを使わずに、階段を利用する。
・家事をするときに、大きな動作で行う(掃除機がけや床ふきなど)
・かかと落としを1日合計10~30回程度行う。(歯磨きをする時に行うなど習慣づけて)
・バスはひと停留所前でおりて歩く など・・・。
○ウォーキングは一石○鳥!?
ちょっとした日常の運動が出来るようになったらウォーキングも始めてみると良いでしょう。
始めは10分位など少しずつ体の調子にあわせてでかまいません。また、買い物がてらなど日常の習慣に組み入れると続きやすいでしょう。
そして、ウォーキングにはあと3つ良いことがあります。
ウォーキングにより日光浴をすると、皮膚からビタミンDが生成されます。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあります。また、ウォーキングにより足の骨が刺激されて骨も強くします。
また、運動は睡眠とも深く関わっています。良質な睡眠は、毎日少しの運動をすることにより、得られるといわれています。良質な睡眠が得られれば、日々の活動やフレイル予防にも効果的です。
筋肉を作り、骨も強くし、ビタミンDも生成、良質な睡眠も得ることができるウォーキング。まさに一石四鳥ですね!
孤独はフレイルの入口です
フレイルは身体面ばかりではなく、精神面や心も関係しています。とくに、人と話をしたりあったりすることが少なくなってくるとフレイルの入口に入るとも言われています。
もし身近に話せる人がいれば話をすることから。家族や友達、知人など。直接会うことができない場合は、電話をしてもよいでしょう。
また町内会や公共の場所でも交流の場を無料もしくは格安で設けている自治体が多くありますので出かけてみるのもよいでしょう。
他には、あなたの趣味や好きな事から外に出てみてはいかがでしょうか?
人とおしゃべりをしたり、好きな事を仲間と一緒に行ったりすることで、活力がわいてきて活動的になってきます。
まずは、出来ることから始めてみませんか?
最後に。
フレイル予防は、運動、栄養、社会参加が大切ですが、簡単に言えば
「よく食べ、よく動き、よく笑う」
ということですね。いつまでもあなたらしくいきいきとした生活を送るためにフレイル予防はじめましょう!
参考サイト
広島県福山市のホームページ フレイル予防しましょう より
厚生労働省 フレイル予防事業「食べて元気にフレイル予防」より